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第2章 光と影の間で 第17話*

Auteur: 花宮守
last update Date de publication: 2025-03-25 00:00:07

 ホテルの部屋が何号室なのかも、部屋の装飾さえも、情報がうまく頭に入ってこない。これから始まることと、彼の存在感に圧倒されて、息をするのが精一杯。

「すず……」

「影野さん……」

 瞳の奥に炎が揺らめいている。肩を抱く腕に力がこもる。触れ合った唇は震え、いったん驚いたように離れた。それから、心を決めたようにしっかりと重ねられ、吐息が絡まり……性急な唇が、私の首筋、鎖骨と下りてきた。

「あっ……」

 漏れた声は、熱を持って男性を求める時のもの。この体は、抱かれることを知っている。彼の指がスカートをたくし上げ、そのまま腰を抱かれてベッドに横たえられた。

「好きだ」

「影野さん……」

 徐々にはだけていく胸元をなぞる唇に、太腿の内側を悩ましくたどる指に、返事をしたい……しないといけない……。

「考えなくていいから……今は、僕を受け入れてほしい……」

 ムードを出すために抑えられた照明の中、直接彼が触れる部分が増えていく。ここのところ胸が疼いていたのはこの人のためだったのだと……甘噛みされ
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